「ラージャ・ヨーガ」は、
ヨーガ・スートラに記されている
八支則
(アシュ・タンガ)に沿って修行を積み、
三昧の境地へ向かっていく、という修行法ですが、
今回は、前回の
プラーナーヤーマに続き、
第5段階の「制感せいかん(プラティヤーハーラ)」です。
今回は、少し心の方に入っていきます。
私たちには、
「視、聴、嗅、味、触」という五つの感覚、
いわゆる
「五感」というものがありますが、
この
感覚器官を制御(コントロール)する。というのが、制感(プラティヤーハーラ)の目的です。
「制感(プラティヤーハーラ)」で、
感覚に振り回されない意志の強さを作っていきます。私たちは、五感を通して外の情報を取り込み、
(あ!美味しそうなパン屋さん!いい匂い〜!)データを認識し、
(そういえばお腹が減ったな〜)行いを決断します。
(買って帰ろう!)
このように、

、

という感覚器官で外の状況を把握し、
その情報に対して、どう行動するかを、
知性(理智)が決定します。
この時、知性(理智)が正常に働けばいいのですが、
感覚器官から得た情報に異常に反応し、その欲望と化した感情に負け、
知性(理智)の声が聞こえず、感情の赴くままに行動してしまうと、
思わぬ失敗をしてしまいます。
例えば、
(パン屋のたとえ話が続きますが…)パンを購入し、意気揚々と歩いていたところに、
さらに美味しそうなパン屋に遭遇してしまった。
(こんな美味しそうなパン、初めて見るー!)もう既に買っているにもかかわらず、
食べたい!という欲望に負け、買ってしまう。
…パンなら、冷凍しておけばまた食べられますが、
欲望の赴くまま、感情の赴くままに行動してしまい、
取り返しのつかないような失敗をした例は、誰もが持っていると思います。
その失敗をしないためのトレーニング法が、
この
制感(プラティーヤーハーラ)です。
やり方は、
「五感からの情報に対する心の働きを静観すること。」パン屋の例で言えば、
「なんて美味しそー!」「あー!食べたいー!」
という
心の働きを、冷静に、客観的に眺める。そして、
食べたい〜!という欲望に心を占拠させず、
どうすると今はBestなのかを、知性(理智)に判断を委ねていく。このように、感覚器官から受け取った情報を、
「冷静に客観的にありのままを観ていく」という、
感覚に振り回されない練習をしていくことで、
感情的、衝動的な行動がグッと減っていくのです。
「ヨーガ・スートラ」には、
制感(プラティヤーハーラ)に関して、以下のように記されています。
「諸感覚器官がそれぞれの対象に結びつかず、あたかも心素(チッタ)自体に似たものの如くになるのが、制感(プラティヤーハーラ)である。」ヨーガ・スートラ2-54
「これによって、諸感覚器官に対する最高の支配が生ずる。」ヨーガ・スートラ2-55
(訳)
五感で感じる対象物に心が振り回されず、感覚の動きとその対象どちらに対しても、心が静かであることを制感(プラティヤーハーラ)といいます。
プラティヤーハーラ(感覚や行動に引きずられない)の練習によって、感覚を意志で完全に収めることができるようになるのです。
第1段階の禁戒から始まり、制感に至るまでの5部門は、
ヨーガの外的部門と呼ばれています。
これまでの5部門は、外部的条件を整える準備段階に過ぎず、
いよいよこの後、ラージャ・ヨーガの本命の部分、
心を扱う
「瞑想」に入っていきます。
次回は、心を一点に集中させる
第6段階の「集中(ダーラナ)」です。

つづく