「ラージャ・ヨーガ」は、
ヨーガ・スートラ(聖典)に記されている
八支即(アシュ・タンガ)に沿って修行を積み、
三昧の境地へ向かっていく。という伝統的修行法ですが、
今回は、前回の
制感(プラティヤーハーラ)に続き、
第6段階の「ダーラナ(集中、凝念)」です。
いよいよ、ラージャ・ヨーガの本命の部分、
心を扱う「瞑想」に入っていきます。
ヨーガ・スートラも、ここから第3章に入ります。
ヨーガ・スートラには、
「ダーラナ」のことが以下のように記されています。
「ダーラナ(集中、凝念)とは、心を特定の場所に縛りつけることである。」ヨーガ・スートラ3-1(訳)
「ダーラナ(集中、凝念)とは、心を一つの対象に集中させ、
心が動かぬように固定することである。」
深い瞑想をするためには集中力が必要ですが、
ダーラナは、その集中力を高める練習です。
1つ前の段階の「制感(プラティヤーハーラ)」は、
自分の感覚や感情による反応を、
客観的に眺めていきましたが、ダーラナはそれとは反対に、
積極的に、自主的に、特定の場所
(例えば…眉間、胸の奥など身体の一部、
山や木、人物などの外界のもの、
あるいは、音(マントラ)や形(シンボルマーク)等の中から、
一つの対象を選び、そこへ心を集中させる心理操作になります。
「心」は、たくさんの考えで出来ていて、
たくさんの考えが常に流れ続けている状態にあります。
パラパラ漫画をイメージすると分かりやすいかもしれません。
絵を集めてパラパラめくると、絵は動き流れるように見え、
滑らかな動画のように見えます。
考え(絵)が集まり、パラパラめくるように流れる事が、
心の独特の動きとなります。
そんな心の動き、考えの流れを、
意思(マナス)により一つの対象につなぎとめ、
「同じ絵」の考えが流れ続けるようにしておく事が、
ダーラナ(集中、凝念)であり、
ダーラナ(集中、凝念)する事で瞑想ができるのです。
一つの対象を写した考えを流し続けていたはずなのに、
他の対象が考えに写りこみ、
考えがそちらに引っ張られてしまう事を、
「雑念」と言います。
また考えがタマス(鈍性)な状態になり、
何の対象も写さずに流れてしまう事を、
「眠り」と言います。
(眠っていても、考えの流れは止まることはありません。)
瞑想中に、「雑念」や「眠り」に惑わされないように、
ダーラナ(集中、凝念)をして、
心を一つのことに集中させ、心が動かないように固定します。
ダーラナ(集中、凝念)ができるようになると、
ディヤーナ(静慮、禅那)と呼ばれる状態になります。
さらに瞑想が深まると、
サマーディ(三昧)の境地に入っていきます。
次回は、意識が一定の流れを保ち続けている
第7段階の「ディヤーナ(静慮、禅那)」です。

つづく
参考図書:やさしく学ぶYOGA哲学ヨーガ・スートラ(向井田みお)